2020.6.8 2020.8.18
MBAはもう古い?欧米で注目のハイパーフォーカスマスターについて解説
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ビジネスにおける修士(Master)と言えばMBA(Master of Business Administration)が有名ですが、近年欧米で注目されているのがハイパーフォーカスマスター(Hyper Focus Master)と呼ばれている修士です。
日本ではあまり聞き慣れない言葉ですが、どのような特徴があるのでしょうか。
今回は早稲田大学スポーツ科学学術院の佐藤 晋太郎准教授にお話を聞きました。
目次
ハイパーフォーカスマスター(Hyper Focus Master)とは
ハイパーフォーカスマスターとは特定の領域に特化した修士号のことです。
欧米でもハイパーフォーカスマスターという言葉が使われ出したのはここ数年のようで、日本ではまだそこまで知られていない単語だと思います。
スポーツ庁とお仕事をした際のレポートにもハイパーフォーカスマスターという用語を使用しましたので、今後日本でも少しずつ認知が広まる可能性があるかもしれません。
ハイパーフォーカスマスターの学生は20〜30代の方が中心ですが、ビジネスでのキャリアを積んでいる方が多いです。
特定の領域に特化するためには、業界や職種の知見も必要なため、実務経験が豊富な方が通うケースが多いのが理由だと思います。
学校側も様々なバックグラウンドを持った生徒の中からお互いに刺激をしあって、イノベーティブなアイディアや研究を期待しているようです。
ハイパーフォーカスマスターが注目を集めている理由
投資銀行のような金融業界や戦略系コンサルティングファームのようなコンサルティング業界を目指す方にとって、トップビジネススクールのMBAは人気のある修士号であり、私自身アメリカのビジネススクールで教えていたこともありますが、アメリカ全体としては一時期のMBAブームは過ぎています。
参考:Forbes It’s Official: The M.B.A. Degree Is In Crisis
MBAは元々大企業の管理職、マネジメント層向けのプログラムとして始まり、現在では世界各国で様々な学校がプログラムを設けているのはご存知のことでしょう。
MBAはビジネスにおいてご自身のキャリアと合わせて幅広い知見を持ったジェネラリストを育てるのにはふさわしいですが、特定の領域に特化したハイパーフォーカスマスターは即戦力として期待ができるため、企業側からすると採用がしやすい点が注目の一つの理由だと思います。
話を聞いている中では就職率100%のところも珍しくないようです。
ハイパーフォーカスマスターの事例
ハイパーフォーカスマスターが設置されているのは規模が大きい学校の場合が多いです。
これにはいくつか理由がありますが、
- 学位として認められるためには研究者と実務家の教員のバランスが求められる
- 卒業生のいる企業の方がスポンサーを得やすい
- 規模が大きく知名度の高い学校の方が学生を集めやすい
といったことが考えられます。
1の理由について補足すると、ハイパーフォーカスマスターで教えている先生はアカデミックな研究者の方よりも、実際に特定の領域の最先端でビジネスを行なっている実務家の方がほとんどです。
ただ、学位として認められるには実務家ばかりの先生ではなく研究者の先生の割合も一定以上求められます。
そのため既に研究者が多く活躍している学部の中で設置されているケースがほとんどです。
では実際にどのようなプログラムがあるのかについて見ていきましょう。
なお、私はスポーツビジネスの研究がメインのため、スポーツに関するハイパーフォーカスマスターの事例になります。
米オレゴン大学スポーツプロダクトマネジメント
参考:University of Oregon Sports Product Management
オレゴン大学スポーツプロダクトマネジメント(University of Oregon Sports Product Management)はスポーツのプロダクトに特化した修士課程(ハイパーフォーカスマスター )になっています。
オレゴン大学スポーツプロダクトマネジメントのミッションは「Our mission is to build worldwide leaders in the sports product industry.」と記載があり、スポーツプロダクト業界の世界的リーダーを育成することと言えるでしょう。
18ヶ月間のフルタイムコースと21ヶ月間のオンラインプログラムコースがあります。
特徴としては入学してから卒業するまでの間に実際にプロダクトの作り方を学び、良い製品ができたらメーカーと一緒に製品化して販売を行う点が挙げられます。
スポーツおよびアウトドア製品業界の大手企業との連携もしているようで、ナイキ社やアンダーアーマー社、アディダス社、ニューバランス社などの紹介がされています。
また、オレゴン州はナイキ社の本社があることでも知られており、ナイキ・オレゴン・プロジェクトという長距離走選手強化を目的にした陸上競技チームも活動していました。
日本人では大迫傑選手が所属していたこともあり、お聞きになられたことがある方もいるかもしれません。
ちなみに大迫選手も早稲田大学スポーツ科学部の卒業生です。
英ラフバラ大学スポーツテクノロジーインスティテュート
参考:University of Loughborough Sports Technology Institute
ラフバラ大学スポーツテクノロジーインスティテュート(University of Loughborough Sports Technology Institute)はスポーツのテクノロジー分野に特化したプログラムです。
ラフバラ大学の研究所は世界有数の研究グループの一つであり、英国で最大のスポーツテクノロジー研究グループの本拠地になります。
近年のスポーツビジネスにおいてスポーツとテクノロジーは非常に注目を集めている分野です。
Google社やAmazon社、Microsoft社などはAIやIOTをはじめとしたスポーツテックにも力を入れ始めています。
日本ではソフトバンク社、DeNA社、楽天社などが力を入れているのが有名です。
卒業生はスポーツ業界でも注目を集めている企業のR&Dポジションに就いていることも多いようです。
あなたはMBAとハイパーフォーカスマスターどちらに興味がありますか?
最後にこんな質問がありました。
「MBAとハイパーフォーカスマスターに今から行くとしたらどちらに行きますか?」
インタビュアーの私としては、明確にやりたいことが決まっていればハイパーフォーカスマスターに行くと思いますが、まだ決まっていない中であればMBAに行くという回答を考えています。
日本でも今後スペシャリストのニーズが増えてくることも予想されますので、ハイパーフォーカスマスターに近いものが出てくるかもしれません。
一生懸命勉強することができる特定の領域を持っているということは素敵なことだと思います。
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