2021.2.10 2021.8.21
ストックオプションの効果とメリットを正しく理解しておこう
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「ストックオプション」という言葉を聞いたことがあることは多いと思いますが、実際にどういうものか、しっかりと理解する機会はなかなかないものです。
例えばベンチャー企業や外資系企業の場合、「ストックオプション」がもらえるという条件で入社を決定したり、外部顧問に就任したりするようなケースもあります。
今回はストックオプションの効果とメリットについてご紹介いたします。
目次
ストックオプションとは?
ストックオプションとは、株式会社が、従業員や取締役に対して、自社の株をあらかじめ定められた金額(権利行使価格)で取得する権利を付与し、将来株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社の株式を取得・売却して、株価の上昇分の報酬を得られる報酬の制度です。
従業員や取締役は、将来、株価が上昇した時点でストックオプションの権利を行使すると、その時点の株式を権利行使価格で取得し、その後、時価で株式を売却することになります。
つまり、あらかじめ定められた金額=権利行使価格と、株価上昇分の価格との差額が利益として手に入るという報酬制度の一つです。
報酬額は、企業の業績向上による株価上昇と一致する為、権利を付与された役員や従業員の株価に対する意識は高まり、業績向上のインセンティブに繋がるでしょう。
なぜベンチャー企業のストックオプションは魅力的なのか
一般的に、ストックオプションの話になると自動的にベンチャー企業も話題に上がります。
理由は、ストックオプションのメリットが享受できるのは企業の株価が上昇する局面となり、企業の成長ステージの中で、株価が急激に上昇し、時価総額が短い期間で数億円、数十億円に成長するのは、一般的にはベンチャーのステージのみです。
このため、ベンチャー企業のストックオプションは、特に魅力的であるといえます。
ストックオプションのメリットについて
ストックオプションのメリットについて見ていきましょう。
①優秀な人材を採用しやすくなる
ストックオプションの制度があるというだけで、採用活動の際に将来的なインセンティブをアピールできる為、より優秀な人材を確保することにつながります。
さらに優秀な人材が入社した後も、より会社の業績を上げて株価上昇につなげようと働くことにポジティブなので、会社にとってもよい影響を与えます。
②従業員のモチベーションアップにつながり、コミットメントを引き出す
自社の業績向上が直接的に株価上昇につながり、結果的に自身の報酬に反映される為、従業員のモチベーションアップにつながります。
③権利付与された従業員のリスクがない
単純に自己資金で自社株を取得し、その株価が下落した場合、少なからずリスクを被ることになってしまいますが、ストックオプションの場合は、ただストックオプションを行使しなければ何も起きないので、特段リスクは無いと言えます。
この点においては通常の株取引に比べ、ノーリスクハイリターンといえる制度でしょう。
ストックオプションのデメリットについて
続いてストックオプションのデメリットについて見ていきましょう。
業績悪化による従業員のモチベーションダウンの可能性
今後成長が見込まれているベンチャー企業には、大きな伸びしろがある反面、上手くいかずに業績が悪化してIPOが出来ない場合や上場しても株価が下落してしまう可能性があります。
その際、ストックオプション制度目当てで入社した従業員や取締役は、ストックオプションを行使するタイミングを失い、結果的に働くモチベーションを維持することが難しくなってしまうのです。
②従業員、取締役の温度差が生まれやすい
ストックオプションを付与されている従業員・取締役とそれ以外のメンバーが混在している場合、業務に対する温度感に差が生まれやすくなってしまう可能性があります。
そういったリスクを回避する為にも、あらかじめストックオプションを付与する基準(会社業績への貢献度、勤続年数など)を、明確に定めておくことが重要です。
③自社の業績や成長性以外の要因による株価変動が、将来の報酬に影響を与えるリスクがある
株価は企業自体の業績以外にも、景気などの外部要因によって上下することがあります。
どんなに経営努力を行い新技術・新商品を開発してきた経営者も、経済全体が落ち込んでいる時期に企業の要因以外で株価が下落してしまえば、どうすることもできないのです。
このように付与対象者の報酬は、自社の業績など以外、つまり従業員等努力の影響範囲外のところから影響を受ける可能性があるということです。
④権利行使をしたタイミングで課税されること
ストックオプションの権利を行使する際、売却による利益が出ていなくても、株式取得時に発生する額面上の利益に先行課税されることになります。
権利行使して得た株式をすぐに売却して利益を手にできる人は特に問題ないのですが、役員や、一定以上のポジションの従業員については、一般的に株式を長期保有することが求められますし、特に上場後はインサイダー情報を持っていることも多いので株をすぐには売却できない場合もあります。
権利行使する=株を買うということになるので、権利行使のためのお金を払った上、そのタイミングで税金も払うことになるわけです。
時に何千万円の納税が先行して発生し、現金を回収できるのは何年も後ということが起きるのは、容易に想像がつくと思います。
そこで、ストックオプションの権利行使時の先行課税をなくすため、ストックオプション制度には「税制適格」という税制優遇制度が設けられています。
一定の要件(税制適格要件)を満たせば、課税のタイミングは権利行使時ではなく株式売却時、つまり、お金を受け取って初めて課税されるようにできるという制度です。
<税制優遇措置を受けるための要件>
- 付与対象者が、自社の取締役・執行役または使用人およびその相続人であること(一定の大口株主およびその特別関係者を除きます)
- 付与対象者が発行株式総数の50%超を直接または間接に保有する法人の取締役、執行役または使用人およびその相続人に該当している
- 権利行使期間が付与決議の後2年を経過した日から、付与決議の日の後10年を経過するまでのあいだであること
- 権利行使価格がストックオプションについての契約締結時の1株あたりの価格以上であること
- 権利行使価格が年間1,200万円を超えないこと
ストックオプションと新株予約権との違い
ストックオプションに近いものとして新株予約権があります。
新株予約権とは、会社が発行した株式を優先的に引き受ける権利です。
日本国内では90年代までストックオプション制度は認められておらず、ソニーやソフトバンクが疑似ストックオプション制度として新株予約権を取り入れていました。
その後、徐々に実務界のニーズの高まりや、株価下落等によって、景気対策の一つとしてストックオプション制度が設けられました。
新株予約権のうち、インセンティブ目的で社員や取締役に対して付与される場合の権利が、「ストックオプション」となります。
社員や取締役に新株予約権が付与された場合は、税務や証券取引上でいくつかの優遇処置が認められている為、非常に有利であるというイメージがつきました。
ストックオプションはどうやって決めるべき?
ストックオプション制度は大きなメリットがある反面、前述のとおりデメリットもある制度です。
導入はしたものの経済状況によっては機能しない可能性もありますし、基準を明確にしなければ逆に一部従業員のモチベーションを低下させてしまう可能性もあります。
その他にも、株式公開準備中に入社した幹部が株式上場と同時にストックオプションの行使を行い、多額の報酬を手にして退職してしまうケースもあります。
導入の際に気を付けておきたいポイントは以下になります。
- 企業のステージや現状の株価を意識した発行時期
- 付与対象者の選定基準の設定、対象者への説明方法や付与方法
- 将来の増資やIPO、ストックオプション発行を考慮した株主構成
- その他、法律、会計、税務の点について留意事項など
弁護士や税理士などの専門家に相談してストックオプションを発行したにもかかわらず、税制適格が考慮されていなかったというようなケースも少なくありません。
従業員や取締役が不利益を受けたり、ストックオプションの効果が得られなかったりすることがないよう、専門家や投資家が示してくるプランが最適なのか慎重に検討し、不安を感じれば、違う専門家に改めて確認し直す必要があるかもしれません。
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